ISO 9001:2015年度版への適応について(主に医療機器、医薬部外品、化粧品、病院産業様)

QMS(品質マネジメントシステム)の規格として長年導入されているISO 9001は2015年版が9月15日に発行されましたた。移行期間は発行日より3ヶ年とされているため、ISO 9001:2008年度版を適応されている組織は、2018年9月14日までに新版への移行審査を受ける必要があります。

発行からちょうど一年が経過、私共の業務におきましてもISO 9001:2015年度版への適応のご質問やご相談が増えてまいりました。これは年一回のサーベランス監査の機会を2015年度版で適応する配慮からと考えます。

ISOというと書類を揃え、記録を取り、社内の承認印を積み重ねて…、というイメージを持たれる方が多いと考えます。
一側面においてこの認識は正しいのですが、煩雑な要素を多く含み、その活動自体が品質へどのように直結するか全員が視認することが難しいため、組織内部の推進力が落ち形骸化される事例を多く拝見してきました。認証維持のために、一部セクションの驚異的な努力をされる方々(主に品質管理関係の方)により、文書体系や記録が維持され、監査のタイミングに合わせて「乗り切る」という運用をされている組織も少なからず存在すると考えます。

現状でISO 9001:2008を運用されている組織は、次回更新監査時に2015年度版適応の調整が必要になります。この機会に自社のISO運用の意味、最大のメリットは何かを深く考えておきましょう。

そもそもISO 9001とは何なのか?(誕生の歴史と元々の目的)

誕生の歴史
ISO 9001の起源は1958年アメリカ国防総省の軍事向け品質規格であるMIL-Q-9858-Aに始まるといわれます。この規格は軍事同盟としてNATO軍用規格へ展開、イギリス、ドイツ、フランス等へ展開していきます。
各国でそれぞれ適応が進む中、このMIL-Q-9858-Aを母体とするアメリカの「米国工業規格ANZI Z1.15」、イギリスの「BS 5750」という二つの規格が合わさり、1987年にISO 9000シリーズが誕生します。
この9000シリーズは各国の品質保証規格として採用され、現在では9000(用語)、9001(品質マネジメントシステム)、9004(組織の持続的成功のための運営管理)として引き継がれています。

元々の目的とは…
誕生の歴史からも分かるようにISO 9000シリーズの根幹設計は軍事産業でした。軍需品はその使用用途から高度な品質が要求されます。アメリカ国防総省が兵器メーカーに軍需品発注を行う際、該当メーカーが要求する品質に答えられるかを監査形式で確認するために構築されたシステムです。

これらが時代と共に変遷し、製造業のみでなくサービス業の範囲でもでも良く見られる規格として定着してきました。

ISO 9001:2015年度版更新の前に…組織で考える

恐らくアメリカ国防総省から監査を受ける企業様はそれほど多くないでしょう。
それでは…
 「なぜISO 9001運用しているのか?」
 「一体何の目的で?」

2015年度版の改定ではトップマネジメントが担うべき範囲がより明確に記述されました。
ISO 9001運用に際し、先の2つの問に加え、「メリットは?」「デメリットは?」「どうして行きたいか?」など、一度深く考え、組織に伝達する必要があります。

次回は、このための思考材料となる「監査の種類と意味」についてまとめます。